犯罪者名鑑 麻原彰晃 9

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 ハルマゲドン思想の誕生

 ヨーガ道場「オウムの会」を設立してから一年ほど経った頃、麻原は東北の地に、永久に錆びない不思議な金属「ヒヒイロカネ」を探す旅に出かけました。オカルトに傾倒し、超能力を得るための修行に没頭していた麻原は、愛読していた雑誌「神秘之日本」の中でヒヒイロカネに関する記述を発見し、この金属に超能力を増幅するパワーがあると信じ、わざわざ探しに出かけたのです。

 「神秘之日本」を主宰していたのは、千九百年代初頭、帝国陸軍に所属していた、酒井勝軍という人物でした。軍の密命で中東情勢を調査した際、現地で学んだユダヤ教と、「竹ノ内文書」なる古文書の記述を掛け合わせ、日本にもピラミッドがあるとの主張を展開した、オカルト界では著名な人物です。ヒヒイロカネ探しの途中、偶然立ち寄った宿で、麻原は宿の主人から、この人物の「予言」を聞きました。それを自らの著作に記したのが、次の記述です。

――今世紀末、ハルマゲドンが起こる。生き残るのは、慈悲深い神仙民族(修行により超能力を得た人)だ。指導者は日本から出るが、今の天皇とは違う。

 まさしく、オウムが宗教色を前面に押し出すようになってから説かれ始めたハルマゲドン思想の原型が、この時期すでに生まれていたのです。そしてこの約一年後、麻原はオウムの会を「オウム神仙の会」と改称し、牧歌的な空気が漂うヨーガサークルを突然、宗教団体へと変貌させたのです。

 ちなみにヒヒイロカネですが、麻原はこれを四トントラックに積んで大量に持ち帰り、オウムの出家信者に与えられるバッジ「プルシャ」が出来るまで、教団の中で神聖なアイテムとして扱うようになります。おそらくは、ヨーロッパの軍隊における勲章制度のようにして利用していたのでしょう。勲章は、原資が殆どかからない割りには、与えられた方は大層喜び、君主に一層の忠誠を誓って働いてくれます。麻原は、修行のステージが進んだ信者に、賞金のかわりに、謎の研究家からタダ同然で譲り受けたヒヒイロカネを配ることで経費の節約を図り、教団の財力を充実させていったのです。

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 マスメディアに登場

 
 超能力の修行を進める麻原は、1985年9月、満を持してメディアに登場します。オカルト系雑誌「トワイライトゾーン」に、有名な空中浮揚の写真が掲載されたのです。以来、麻原はトワイライトゾーンに連載コーナーを持ち、自らが修行により得た「神秘体験」を誌上に披露していきます。

 無名のヨーガサークル主宰者に過ぎなかった当時の麻原がいきなり雑誌に連載を持つことができた秘密は、雑誌社に多額の広告収入を齎していたことでした。カラー1ページで三十五万、モノクロで二十万。当時、会員を十五人前後しか抱えていなかった麻原がなぜそれほどのお金を払うことができたのかは不明ですが、とにかく金の力により、麻原は自らの知名度を高めていったのです。

 それにしても、上記の空中浮揚の写真、筋張った筋肉といい、うんこを我慢しているような顔といい、私にはどう見ても足の力で飛んでいるようにしか見えないのですが、これを空中浮揚と言い張り堂々と雑誌に載せてしまう麻原の羞恥心のなさには恐れいります。馬鹿にしているわけではありません。古今東西の英雄には、奇抜な政策を凡人にどれだけ嘲笑されても蛙の面に水で済ませる精神力を備えていますが、麻原にもそれがあったということです。そして、インチキでも堂々とやってのければ、それを信じてしまう人間は少なからずいます。事実、麻原の渾身の力を込めたジャンプ、いや空中浮揚の写真を見て、オウムに多くの人が集まったのです。

 ちなみに空中浮揚の歴史は古く、有名なところでは、室町時代の管領細川家の全盛期の当主、細川政元なども、密教を信仰し空中浮揚をするための修行に励んでいたという話が伝わっています。密教の修行内容には「不犯」、つまり女性を近づけない戒律があり、これを守らなければ超能力は得られないとされています。当時は血縁社会であり、子供を作ることも権力者の大事な仕事だったにも関わらず、政元は独身を貫いため、その死後に二人の養子の間で相続争いがおき、それが世の中の政治的混迷にまで繋がってしまいました。政元自身は「半将軍」の異名をとるほど有能な人物でしたから、その危険性は十分わかっていたはずです。わかったうえで、「天下の民よりも俺が空を飛ぶほうが大事」と修行に励むほど、超能力への欲求が深い人がいるのです。

 麻原の超能力を最大の売りにしていた初期オウムに入った人たちも、そういう熱心な信仰心を持つ人でした。当時、日本は空前のオカルトブーム。雑誌やテレビなどに数多の自称超能力者が現れましたが、彼らの大半が、自らの超能力をひけらかし一人悦に耽るだけに終始していたのに対し、麻原が新しかったのは、超能力を得るための具体的なノウハウについて述べ、自分と一緒に解脱を目指そうと説きまわったことでした。

――人は誰でも、神秘の力を有している。そしてそれを、超越神力と呼ぶのだ。

 私がオウムソングで一番好きな歌、「超越神力」の歌詞の冒頭ですが、これまで憧憬の対象でしかなかった超能力者に自分もなれると思わせたところが、オウム初期の麻原が人を惹きつけた最大の要因だったのです。

 カネが人を呼び、人がカネを呼ぶ。時流にも乗って、麻原のオウムの会は一挙に膨張を遂げていきました。
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No title

しかし麻原はお金持ってますね。
お金持ちの支援者か信者でもいたのでしょうかね。
使うべき所には使っていき結果的にはそれが利益につながるという行動も麻原の経営能力の上手さですね。

No title

>>seasky

 この時期の麻原に全部自分の財布から莫大な広告料を出す資金力があったとは思えないので、信者からの援助か借金と考えるのが妥当でしょうね・・。麻原の経営の巧みさは確かなところで、彼が必要以上の人望や権力を求めていなければ、ビジネスの大成功者として後生に名を残していたことでしょう。

つい先日、尊師にそっくりな人と出会いました。


尊師似の人と出会う事は、間々あります。


それだけ、髭・ロン毛・細く垂れた目、といった特徴を持つ人の代名詞が、尊師なのでしょうね。

時間さえ超越した、尊師の圧倒的存在感がなせる技です。


今日、テレビでやるオウムの特集が楽しみです。

No title

>>L.wさん

 古くは猿と呼ばれた太閤秀吉、現代なら共産党の志位和夫委員長などを見るとわかる通り、指導者には「異相」というのは重要な才能でしょうね。ヒトラーのちょび髭などもそうですが、一目みてこの人だとわかる見た目の特徴があるのは絶対的にプラスです。

 オウムの核武装化計画というのがテーマの一つのようですが、その部分については話半分程度に聞いていたほうがいいでしょうね・・。原爆を作るのは意外に大した設備がなくてもできるそうですが・・・。

ふと思い出しました、昔ニュースで観た尊師が逮捕された時のやり取りを。


サティアンの天井裏にて。


「麻原彰晃か?」

「はい」

「腹がでているようだが、大丈夫か?」

「腹は大丈夫ですが、頭がつっかえるかもしれません」



当時、私は衝撃を受けました。尊師の発言が正しければ、尊師の頭は、腹よりもデカい事になります。


テレビの前で普通にツッコミました。

No title

>>L.wさん

尊師似の人には私の家の近所だと寿町あたりに行くと沢山会えますね・・。

完璧超人ではなく滑稽なエピソードが沢山あるのが尊師が人を惹きつけてやまない理由です。

そうか、滑稽なエピソードに心踊らせた私は、既に尊師の術中にハマっていたのですね 笑


尊師の完璧さのみを垣間見た人間にとって、尊師はカリスマ。

私のように、滑稽さを覚えた人間にとって、尊師は魅力的なオッサン。



他人への好意は、憧憬よりも、寧ろ親近感、或いは、ある種の蔑みから生まれる事の方が多いでしょう。


立派で難しい事を言う人よりも、馬鹿の方が好かれたりします。

馬鹿(自分よりも)を好いた方が楽だから、というの理由が大半であるように思われます。


要は、一緒にいて心地いい、というやつです。



私は、そのような観念があまりないのですが。

オウムの思想の完成度について、兼ねてから疑問がありました。


インテリを虜にしたからには、さぞかし優れた思想なのでしょうが、反駁の余地がないようには思えません。

私は、哲学などが結構好きです。

多くの哲学的命題を、オウムの思想が解決してくれるとは思えません。


やはり神秘体験などのオマケがあると違うのですかね?

No title

>>L.wさん

 オウムがインテリを虜にしたのは、人の優越感をくすぐったところが大きかったんじゃないかと思います。

 はじめは人より優れた超能力者になるというところから始まって、ハルマゲドン云々を唱えることにより選民思想を植え付け、さらには権力を与えることにより、文字通りの「グルのクローン化」を果たしたのではないでしょうか。

 オウム幹部には、自己中心的で人を見下す傾向のある人が多いです。特に上祐や青山などは「ミニ麻原」といってもいいほど他人に対して尊大な態度が目立つ人間でした。「犬は飼い主に似る」とでもいうのか、この教祖にしてこの信者ありという集団だったと思うんですよね。

 インテリがみんな崇高、高尚だと思うのは間違いで、彼らも所詮は優越感を満たしたいだけのただの人間だったということだと思うんです。哲学的には最低限辻褄が合っていればいいのであって、麻原にもそれぐらいの理論構築はできていたと。突き詰めていけばガバガバなんてのはすぐわかるんですがね。


プロフィール

津島 博行

Author:津島 博行
1987年4月3日生 男性
相互リンク歓迎します。

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